高齢者の遺品整理を早めに行うメリットと注意点

高齢者の遺品整理をどのタイミングで始めるべきか、迷っている人も多いのではないでしょうか。
特に遺品整理は初めて経験する人も多いため、早く片づけることで故人に対して失礼になってしまうのではないか、親族同士のトラブルになってしまったらどうしよう…と不安に思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
結論として、遺品整理に決められたタイミングが存在するわけではありません。高齢者の遺品整理を早めに行うことで、どのようなメリットが期待できるのか詳しく解説していきたいと思います。
四十九日前に片付けても問題ない?
遺品整理において考えるときに、四十九日よりも前に片づけても問題がないかどうか、不安に思っている人もいるのではないでしょうか。
四十九日とは、故人の冥福を祈るために行われる儀式であり、仏教では特に重要なものです。四十九日の期間中は、結婚式や旅行などが制限されます。そのため、四十九日までの間は、遺品整理を始めることに悲観的な意見もあります。
とはいえ、仏教では必ずしも四十九日のあとに遺品整理をしなくてはいけないなどの決まりがあるわけではありません。遺族にとっても、遺品と向き合うことが心の整理につながることもあり、あえて遺品整理を始める人もいます。
向き合うことで、気持ちが辛くなってしまうのであれば、無理に遺品整理を行うことはありません。
遺品整理を早めに行うメリット10選
遺品整理を始めるタイミングは、それぞれの事情によっても異なります。
遺品整理を早めに行うことでどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
・心の整理ができゆっくりと向き合える
・四十九日の法要で形見分けができる
・不要な出費を減らすことに繋がる
・忌引休暇の範囲で遺品整理ができる
・別の遺族に遺品を処分されるリスクが減る
・希望日に片付けを進めやすくなる
・故人の希望に考慮した遺品整理ができる
・不動産の売却手続きを早めにできる
・故人の財産や負債の状況を把握できる
・空き家ならではのリスクを防げる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
心の整理ができゆっくりと向き合える
遺品整理を早めに行うことで、心の整理がつき気持ちが前向きになる人もいます。
遺品整理をそのままにしていると、部屋のなかが片付かなくなってしまうのはもちろんですが、必要な手続きなども後回しになってしまいます。「いつか片づけをしなくては…」と頭の片隅にずっと遺品整理が残っている状態になります。
また、遺品整理に向き合えない自分自身を責めてしまう人もいるでしょう。早めに向き合うことで故人との思い出を振り返ったり、他の遺族と話すきっかけにもなります。
四十九日の法要で形見分けができる
四十九日よりも前に遺品整理を終わらせておけば、法要で親族が集まったタイミングで形見分けを行うこともできます。
四十九日の法要は、故人との関係の深い人が集まる行事だからこそ、遺品についての話も出てきます。思い出の品をどうするのか、四十九日のタイミングで形見分けができればスムーズに作業を進められます。
特に親族が遠方に住んでいる場合は、赴いて遺品を渡すのが難しくなってしまいます。故人の衣類や着物を形見分けする場合、事前にクリーニングを済ませておきましょう。
不要な出費を減らすことに繋がる
遺品整理を早めに行うことで、かかる費用を抑えられる点もメリットと言えるでしょう。故人が使っていた携帯電話やサブスクリプションの契約、税金関係、家賃など亡くなったからといって勝手に解約になるわけではありません。
遺族が手続きを行わないと、そのまま費用がかかり続けてしまいます。遺品のなかで解約の手続きを行うものはあるのかを確認しておくことで、不要な出費を抑えることにもつながります。
契約書などの重要な書類は、しっかりと目を通しておき、更新のタイミングを見逃さないようにしておきましょう。
忌引休暇の範囲で遺品整理ができる
家族や親族が亡くなると所定の忌引休暇を取る人も多いと思います。
忌引休暇は故人との関係によっても異なります。
配偶者の場合…10日間
父親・母親…7日間
子供や養父母…5日間
祖父母や兄弟姉妹…3日間
会社によっても変わり、どこまでを忌引休暇の対象にするかが変わってきます。
気持ちの整理をするための時間でもありますが、まとまった時間が確保できる分遺品整理の作業をスムーズに進めることにも繋がります。
仕事が忙しい人にとっても、遺品整理をしやすいタイミングと言えるでしょう。
別の遺族に遺品を処分されるリスクが減る
遺品整理を後回しにしていると、近くに住んでいる別の遺族に処分されてしまう可能性も考えられます。
例えば、手続きに必要になるような大切な書類はもちろん、故人と個人的に約束していたものを勝手に捨てられてしまうことも考えられます。遺品整理に対しての考え方は、遺族によっても個人差があります。
なかには、早めに片づけておきたいと考える人がいてもおかしくありません。勝手に処分されるリスクを減らすためにも、早めに片づけてしまったほうが、親族間同士のトラブルを防ぐことにも繋がります。
希望日に片付けを進めやすくなる
早めに片付けることでスケジュールにも余裕ができ、希望日に片付けを進めやすくなります。
四十九日のタイミングで片付けを考えていても、他の手続きもあり後回しになってしまうことも少なくありません。四十九日が近づき、納骨や法要などでスケジュールの調整が難しくなってしまい、親族同士のスケジュール調整ができなくなってしまうこともあります。
早めに調整しておけば、遠方に住んでいて帰省する遺族の予定も合わせやすくなります。
故人の希望に考慮した遺品整理ができる
亡くなって間もないタイミングでは、故人との思い出の品や希望を鮮明に覚えているものです。
なかには「この品は処分せずに残しておいてほしい」と頼まれたものもあるのではないでしょうか。できるだけ希望を考慮してあげたいと思っても、時間の経過とともに仕事など他のことで忙しくなってしまいます。
記憶が薄れることで、大切なものを誤って処分してしまう可能性も出てきます。できるだけ記憶が鮮明なうちに片付けることで、遺品整理で後悔するリスクを減らせます。
不動産の売却手続きを早めにできる
故人が住んでいた物件によっても変わりますが、所有している物件であっても誰も住む予定がない場合は売却も視野に入れた手続きが必要になってきます。
特に、故人が賃貸物件に住んでいた場合は、遺品整理を終え原状回復まで進めないと解約の手続きができません。
更新時期が2年に1度ありますし、解約の場合いつまでに伝えるなど期限が決められている場合も少なくありません。後回しにしていても家賃の支払いが続いてしまうこともあるため、早めの対応が必要になります。
故人の財産や負債の状況を把握できる
遺品整理を早めに行うことで、故人の財産や負債の状況を早めに把握したうえでどのようにするのかを親族同士で決められる余裕ができます。
なかには、亡くなるまで借金や負債が多いことを知らないケースも少なくありません。特に両親など、日ごろからコミュニケーションをとる機会が少ないとお金に関する話をしないままになってしまいます。
財産の全体像を把握するためにも、まずは遺品整理を進めていくことが大切です。
空き家ならではのリスクを防げる
故人が持ち家に住んでいた場合、亡くなるとそのまま空き家になってしまうケースも少なくありません。子どもは独立して近くに住んでいない人も多く、核家族化が進んでいるからこそ、空き家のリスクも高まっています。
周辺空き家を管理してくれる遺族がいる場合はいいのですが、そのまま放置すると厄介なことになりかねません。空き家の状態では、火災のリスクや不法侵入、不法投棄などのリスクも出てきます。
空き家を放置したことで近隣の住民に被害が出てしまった場合、損害賠償を請求されるリスクも出てきます。空き家ならではのリスクを減らすためにも、早めの遺品整理をおすすめします。
遺品整理を早めに行う注意点
遺品整理を早めに行うメリットはたくさんありますが、同時に注意点においても目を向けておかなくてはいけません。余計なトラブルに巻き込まれないようにするためにも、どんな注意点があるのかに目を向けておく必要があります。
・相続放棄の手続きに影響する場合もある
・心の整理ができていないと作業が負担になる
・遺言書やエンディングノートを確認する
・他の遺族に許可を取ったうえで行うこと
・重要な書類を誤って処分しないこと
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続放棄の手続きに影響する場合もある
遺品整理を行うことで、相続放棄の手続きに影響してしまうリスクも出てきます。遺品整理を行った場合、相続を「単純承認」したとみなされてしまいます。故人の遺産だけに限らず、借金の相続も認めたことになってしまうため注意しなくてはいけません。
遺品整理を行わないと、財産や負債の全体像が見えません。相続放棄の手続きに影響してしまうことも考えられるため、相続放棄を検討している場合は遺族と話し合ったうえで時期を決めるようにしてください。
心の整理ができていないと作業が負担になる
故人との関係が深いほど、亡くなってすぐに心の整理ができるとは限りません。特に、遺品のなかにある写真などの思い出の品や、衣類のように実際に着ていた姿を思い出せるようなものは、無理に処分するのはおすすめしません。
遺品に対して片づけなくてはいけないものと決めつけてしまったり、余計な義務感が負担になってしまうこともあります。心の整理ができていないときは、冷静に考えられるようになるまでは作業を中断してもいいのです。自分の心の声に寄り添って進めていくようにしましょう。
遺言書やエンディングノートを確認する
遺品整理を始める前に、まずは故人の遺言書やエンディングノートが残っていないか確認するようにしてください。遺品整理において重要になるのは、遺族ではなく「故人の意思」です。
遺産をどのように分配してほしいのか、葬儀や納骨の方法などの希望が書かれていると思います。特に、遺言書は法的な役割を持っているため、無視したまま遺品整理を行うことはできません。親族同士のトラブルの原因になりますので、遺品整理を始める前に確認しておくのをおすすめします。
他の遺族に許可を取ったうえで行うこと
遺品整理を始めるうえで、ほかの遺族に了承を得ているのかどうかも重要になってきます。了承を得る前に遺品整理を始めてしまい、親族同士のトラブルになってしまうことも考えられます。
処分してしまった遺品が、他の遺族にとっては大切なものの可能性もあります。なかには、処分していないものを勝手に売却して利益を横取りしたと疑われてしまうことも考えられます。
遺品整理を行うときは、相続人全員から同意を得ているかどうかを確認すること、言った・言わないにならないためにも書面に残しておくのをおすすめします。
重要な書類を誤って処分しないこと
遺品整理を始める前に、相続に関わる書類など重要なものはまとめておくのをおすすめします。遺族にとって遺品整理だけを行うのではなく、書類をもとに必要な手続きを所定の日時までに行う必要が出てきます。
慌てて作業をすれば、ミスの原因になったり作業が雑になってしまうこともあるでしょう。重要な書類を処分してしまうと、確認作業の手間も増えてしまいます。事前にまとめておくような重要書類は以下のようなものです。
・故人の遺言書
・故人からの手紙
・土地の権利書
遺品整理は自分たちか業者に依頼するか
遺品整理は、自分たちで行う人もいれば業者に依頼する人もいます。どちらを選択したらから正解と決まっているわけではありません。
遺品整理は自分たちでも十分にできる作業ではありますが、流れや注意点をしっかりと押さえておかないと、遺族同士のトラブルの原因となってしまうことも考えられます。
また、遺品のなかに大きな家具や家電もあり持ち運びや処分に手間がかかってしまうときは、業者に依頼するのもおすすめします。
まとめ
高齢者の遺品整理をどのタイミングで始めるべきか、状況によっても変わりますが早く行えばいいとは限りません。早く片づけることで気持ちの整理がつき、財産や負債の全体像を把握することにも繋がります。
とはいえ、遺族同士の気持ちによっても変わってきますし、相続放棄を考えているのであれば、早く片づけることがメリットばかりとはいえません。遺産相続を早く行うメリットもあれば注意点もあることを覚えておきましょう。
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